「日韓国交正常化40周年」記念公演で、両国の歌曲を披露するソプラノ歌手

田 月仙(チョン・ウォルソン)さん

東京都出身。1983年にデビュー。2002年、日韓W杯関連の公演では両国首脳の前で独唱。二期会会員。今回の公演は、10月1日午後5時から東京オペラシティ(新宿)で。

「人々を引き裂く海峡でなく、つなぐ海峡に」
そんな切なる願いを歌に込めて

 今年は国交回復40周年にちなんだ「日韓友情年」。日韓の声楽家による記念公演「友情の花束」(10月1日)で、「夜明けのうた」(日本)、「高麗山河わが愛」(韓国)など両国の歌曲を歌う。

 「竹島問題などで、一時は無事に開催できるか心配でした。でも、こういう時期こそ交流は大切。もう一つの『韓流』である韓国歌曲の魅力を知ってもらう機会にもなれば」

 歌好きの朝鮮半島の人々の間には、多くの歌曲が受け継がれてきた。特徴は、ドラマチックな曲調と生活感あふれる歌詞だという。そんな歌をよく口ずさんだ在日一世の父に影響を受け、この道に進んだ。

 1998年には東京都の親善大使として、日本文化開放前のソウルで日本の歌を初めて披露。85年には平壌でも公演しており、海峡を越えた文化交流の草分けとなってきた。

 「拍手喝采してくれる人々の姿は、みな同じ。歌があれば、国境や言葉の壁を超えて、心はきっと通じ合う」

 帰還事業で北朝鮮に渡った4人の兄の一人は収容所で死亡。悲しむ母の姿と、拉致被害者の家族の姿とがダブって見えるときもある。

 「人々を引き裂く海峡でなく、人々をつなぐ海峡に」――天へ祈るように歌い上げるスタイルは、そんな切なる願いの表れなのかもしれない。

菊池嘉晃/撮影 中山博敬

YomiuriWeekly 10月9日号より